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GACKT被災地再訪2026 〜もうひとつの物語〜
2026年5月16日に開催された「GACKT被災地再訪2026 ~鎮魂と再生~」。
献花式典の会場となった名取市閖上(ゆりあげ)地区。その地を所管する名取市の担当職員の方は、実は東日本大震災による被災者のお一人でもあった。
事前の下見訪問の際、その担当職員の方から当時のお話を伺う機会があった。震災による津波で自宅を失い、さらに最愛の奥様と生後7か月だったご子息を亡くされたという事実を知った。
目の前にある震災メモリアル公園の慰霊碑に刻まれたお名前を指し、「これが私の妻と息子の名前です」と静かに語られたその瞬間、私たちは言葉を失った。
15年という歳月が流れ、街並みは大きく姿を変えた。しかし、その年月だけでは決して埋めることのできない悲しみや喪失があることを、あらためて痛感させられた。
担当職員の方は、その深い悲しみを抱えながらも、今日まで名取市の復興と未来のために尽力されている。その姿は、震災の記憶を風化させることなく次世代へ伝え続けることの大切さを、私たちに静かに語りかけていた。
そして担当職員の方は、GACKTが震災から15年という歳月が流れた今もなお被災地を訪れ、鎮魂と再生への祈りを捧げ続けていることに対し、深い感謝の言葉を述べられた。
「こうして足を運び続けてくれることが本当にありがたいんです」その言葉には、被災地の記憶を風化させてはならないという切実な想いが込められていた。
さらに担当職員の方は、ご自身もまた音楽に支えられて生きてきたことを、静かに、そして切々と語られた。大切な家族を失った深い悲しみの中で、音楽は心に寄り添い、前を向く力を与えてくれたという。
人の心を救い、癒やし、そして未来へ歩む力を与える――。
その「音楽の力」を身をもって知る一人として、GACKTが音楽活動を通じて伝え続けている想いに深く共感していることが伝わってきた。
震災の記憶を語り継ぐこと。そして、その悲しみの中にある希望を次の世代へ繋いでいくこと。
担当職員の方の言葉は、この日GACKTが被災地で伝え続けた「伝承」というテーマと深く重なり合い、私たちの胸に強く刻まれた。

献花式終了後に、名取市及び仙台市の両職員さんたちとGACKTはご挨拶をした。その際に私たちは前述の経緯をGACKTに簡潔に説明、担当氏を前にしたGACKTも私たちと同じように言葉を失っていた。
その中で、担当氏が「私はGACKTさんのファンでもあるのです」と告白。2001年に発売されたGACKTのミニアルバム「Mizerable」に収録されている曲「LAPIS」を当時どうしても自分でピアノで弾いてみたく、ピアノ譜も無かったので採譜(さいふ)したという[採譜とは耳コピで手書きで譜面を書く事]。その譜面を彼は持参して見せてくれた。聞けば今までに「LAPIS」を何百回、何千回と聴き込んでいるという。
その譜面にGACKTはサインをすると申し出た。

GACKTはサインを入れた楽譜を手渡し、言葉をかけ、固い握手を交わした。その時、担当職員の方の目には涙が溢れていた。
長い年月を経た今、この閖上の地でGACKTと担当職員の方は出会い、音楽を通じて確かに繋がった。その光景は、言葉では表しきれないほど温かく、そして尊い瞬間だった。
失われたものは決して戻らない。それでも人は前を向き、生きていく。その歩みを支える力のひとつが、音楽なのかもしれない。
担当職員の方は今も、「LAPIS」の歌詞にもあるように、遠くへと続く道をしっかりと、そして力強く歩み続けている。
Photo by Lestat C&M Project
Text by T.NAITO

